音ネコと遊んでくれ!

30代音楽男の雑記ブログ

僕が体験した、本当にあった怖い話(隣人編)

どうも、こんばんはミュージック界の稲川淳〇こと、音ネコです。

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今回はですね、僕が学生の時に体験したリアル怖い話を書かせてもらおうかと。

言っとくけどマジ怖いからね? ビビルからね? ホントだよ? ウソじゃないからね? 後悔してもしらないからね?

・・・・・・ほう、逃げ出さないとはいい度胸だ。。。

じゃあはじめるとしようじゃねえか・・・・

学生のころ、僕はアパートに住んでいた

僕は大学から東京にでて来てさ、一番最初に住んだのは一軒家を四分割したいわゆる「全部角部屋」タイプの木造アパートだったんだ。

大学からも駅からも結構距離があった上に坂道が多かったんだけど、広い上に家賃はわりと安かったからそこに決めたんだよね。

田舎にありがちな広い一軒家にずっと住んでたから、狭いところは嫌だなと思ってた。

それにちょうど隣人がいないっていうから、こりゃ気使わなくていいしちょうどいいやと思ってすぐにそこにした。

すごく快適だったよ。日当たりはいいし、近くにネコはいるし、公園はあるし、いいところだった。

部屋の前には小さい畑があって、天気がいい日は畑の作物をぼんやりながめながら音楽を聴いたりした。

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はじめての一人暮らしで、いろんなものにわくわくできた。

やがて隣人が引っ越してきた

たぶん夏に入る前くらいかな、隣の部屋に人が引っ越してきた。とくに挨拶とかはなく気が付いたら誰かが住んでたかんじ。

引っ越しても挨拶しないんだな、と僕は都会に住んでいることを改めて実感した。

そういうものなんだろう、と思って僕は気にとめなかったけど、やっぱり初めての隣人だし、どういう人が越してきたのかは気になった。綺麗な女の子がきてたらいいな、とくだらない妄想をしたりもした。

隣に人が越してきたことに気付いた翌日、たまたま学校が休みだったので僕は家にいた。

その時、僕はサッカーゲームにはまっていたからその日もゲームをしていた。ゲームの選手が華麗なゴールを決めると、それをいろんな角度からなんどもリプレイして、ひとりで楽しんでいた。ぜんぜん飽きなかった。何のスポーツでも素晴らしいゴールシーンを見るのが好きだった。

お昼くらいになって、そろそろおなかがすいたなと少しだけぼんやりしていると、隣の部屋のドアが閉まる音がした。

趣味の悪い話ではずかしいけれど、僕は自分の好奇心をおさえきれずに、ばれないようにカーテンの隙間から外を眺めた。彼女はすぐそこを通るはずだ。

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若い女の子だった。眼鏡をかけ、真面目そうで、服装はぜんぜん垢ぬけていない。もし大学生なら、彼女は学内でけっこう浮いているだろうと思った。そういう生真面目さというか、垢ぬけなさだった。

内心、僕はすこしがっかりしてしまったことを認めよう。

僕はそんな自分に少し嫌悪感を覚えながらも、彼女が見えなくなるまで観察していた。彼女が何者なのかそれだけでは全く分からなかったけれど、そうかあれが隣に越してきた女の子なんだなと、納得して満足し、ゲームに戻った。

あれは何の音だろう?

その日の夜、さすがにゲーム疲れした僕は本を読んでいた。ほとんど小説だったけれど、その当時はよく本を読んでいた。難しいものでも、わからないなりに最後まで読んだ。

学校を卒業した後にそなえて、自分と世の中の折り合いのつけかたみたいなものを僕は本の中から見つけ出そうとしていた。きっとこのままでは自分はうまく生きていけないんじゃないかと思っていたのだ。自分を精神的に鍛える必要があった。

僕は音楽も何もかけず、しんとした部屋の中で文字を追っていた。

すると突然、隣の部屋から何か音がしたのが聞こえた。なにかを転がすような音だ。僕は耳をすませた。

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あのコロコロいう音はなんだろう?

何か軽くてちいさいものが転がる時のような音だ。その音は断続的に聴こえた。

何回か聴こえてから、しばらく止み、また再開した。それが繰り返された。

僕は音を聞きながら、何が転がっているのか考えた。

そして最終的に、転がっているものは鉛筆のようなものなんじゃないかと推測した。

その音はちょうど、小さい時に遊んだバトル鉛筆が転がる時の音にそっくりだったからだ。

でももちろん、向こう側の彼女がひとりでバトル鉛筆をしているはずがないのはわかっていた。いくら学校で浮いていて友達がいなさそうでも、一人でそんなことしないだろう(一人でサッカーゲームのリプレイを何度も見ている僕が言えた義理ではないのだが)。

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なにをやっているかはわからないけれど、でも鉛筆くらいの大きさ・質量・質感の何かを転がしているのは間違いない。結局、その音はしばらく続いてから完全に止んだ。

そのあとは何も聞こえてこなかった。僕は本を読む集中力が切れてしまって、買ってきてあった安い発泡酒を飲んで寝た。

 一度だけ念仏のような声が聞こえてきた

それからも何かを転がすようなコロコロという音はたまに聞こえてきた。僕はすっかりそれに慣れてしまい、聴こえてきても「ああまたやってるな」くらいにしか思わないようになっていた。

しかしある時、それ以外はいつも静かな隣の部屋から人の声が聞こえてきた。たしか24時ごろだったと思う。

小さくて、くぐもるような声だったけれど、その時僕はまた本を読んでいたのですぐに気付いて耳をすませた。

低い人間の声。おそらく男の声だ。

最初、僕はテレビの音だと思った。しかしその男の声しか聴こえてこなかったので、そうではなくて誰かが訪ねてきているのかもしれないと思った。女の子の声だけ小さくて聞こえないのかな、と。

最初に考えたのは隣の女の子のお父さんだろうか、ということだ。彼氏にしてはすこし年をくっているような響きを持っていたし、それにまたもや偏見だけれど彼女に誰か付き合っている人がいるとは考えにくかった。

けれど何か様子が違った。その男の声は誰かと会話している時の声というよりかは、一定の口調で、常にしゃべりつづけていた。

すぐに、これは念仏か何かなんじゃないかと気付いた。いったんそう思うと、そうとしか考えられなくなった。

僕は念のためにテレビをつけて、念仏を唱えているような番組がないか探した。そうであって欲しいという願望を込めてすべてのチャンネルをチェックしたが、そんな番組はなかった。

僕はうなった。とすると今向こう側で、誰かが念仏を唱えているのだろうか。

夜中に、突然? 

あまり気味のいい話ではない。

僕はもっと聴こえるように壁に耳をつけた。あいかわらず念仏は続いていた。ときどき、独特の抑揚がついていた。

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しばらくしてから、この声はテープか何かで再生されているんじゃないかと僕は思った。人の気配というものがあまりに感じられなかったからだ。声は一定で、よどみがなく、物音一つしなかった。

テープか何かでこういうのを聞いているとなると、彼女は何かの宗教の信者なのだろうか。

・・・もしかしたら、例のコロコロ音もそれに関係した儀式みたいなものなんだろうか。

そんなことを考えていると、僕のその思考に感づいたように唐突にテープが止んだ。

その声が止むと、そのアパートはいつも以上にしんとして静かになったように感じた。僕はヒントを探すように壁を眺めた。

しかし壁は僕に何も教えてくれなかった。

隣の女の子は一体何者なんだろう?

僕は彼女がいったい何をしている人なのか、改めて考えるようになった。生活の時間帯的に仕事をしているようには見えなかったし、かといって学生かと言われれば学校に行っているようにも思えなかった。

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僕が気付いていた限りだけど、誰も彼女を訪ねてこなかった。そして彼女のアパートの出入りはとても不定期だった。いろいろな時間帯に彼女は出かけていって、帰ってきた。

部屋にいる時、例の音をのぞけば彼女はおそろしく静かだったから、その判断はいつもドアの開閉音でしていた。

何をやっているのかこれだけ見当のつかない人間も珍しかった。

念仏の一件があってから、彼女は新興宗教か何かに関係しているんじゃないかと思ったが(ちょうど時代的に宗教について何かと騒がれていた)、少なすぎる彼女の情報ではなんとも判断の付けようがなかった。

悪い人ではないように思えた

 彼女について印象的だったことが二つある。

一つめは彼女が散歩しているのを見かけたこと

そのとき僕はいつもと同じように本を読んでいた。確か昼過ぎとかそのくらいだった。そしてふと外をみやると、誰かがアパートの前の道路を歩いているのが見えた。

すぐに隣の女の子だと気付いた。髪は三つあみで白いブラウスにピンクのカーデガンをはおり、くるぶしまである丈の長い紺色のスカートをはき、田舎のデパートで売っているようなノーブランドの白い運動靴を履いていた。そういう恰好をする女の子って、なかなかいない。

明るい時間に外にいる彼女を見るのはめずらしかったので、僕はばれないように気をつけながら観察した。

彼女は手に近くのスーパーの袋を持ちながら、気持ちよさそうにゆっくり歩いていた。そしてアパートの前にある畑のほうをみながら、静かな笑みを浮かべていた。

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どことなく諦観を感じさせるような表情だった。そして全体の雰囲気として、社会から疎外されている人間特有の、周りの景色との違和感のようなものを漂わせていた。ようは少しどこかがずれているように見えた。

そしてこれは僕の偏見でしかないと思うのだけれど、まさしく新興宗教にハマりそうだった。

僕は本当にそうなのかもしれないな、と思った。

と言っても、そういう人々について特にマイナスな感情を抱いていなかったので、そうであってもとりたてて問題はなかった。彼女はとても静かに暮らしているし、こちらに対して何かを言ってくるわけでもなく、僕にとっては理想的な隣人だった。

 彼女はしばらくの間、畑の前に座り込んで、そこにある作物を眺めていた。僕はそれ以上見ることもなかったので、読書に戻った。

もう一つは彼女が間違えて僕の部屋のドアを開けてきたこと

これはたまたまのハプニングだったが、一度彼女は僕の部屋のドアを間違えて開けたことがある。

その日はちょうど、アパートの廊下灯が切れている時だった。そこのアパートの入り口は、周りの建物との立地的な関係で、明りがないと夜は本当に真っ暗になった。ドアノブがかすかに判別できるくらいで、当時僕はアパートに帰った時けっこう手探りでドアノブを探した覚えがある。 

だから彼女はいつもと違う状況の中で、開けるべきドアを間違えてしまったのだと思う。

その時、ちょうど僕は自分で作った夕飯(シャケの切り身と野菜炒めと味噌汁)を食べ終えて、テレビを見ていた。その日は暑かったので、半そで短パンの部屋着になって横になっていた。

すると玄関の方から音がした。何かがドアに触れるような音だ。僕は何ごとかと思ってすぐに起き上がり、玄関の方に向かった。

とりあえず、僕はその得体のしれない物音の様子をさぐるために、ドアから少し離れたところにたって、目を凝らしつつ、耳にも神経を集中させた。まずいことにドアの鍵は開けっぱなしだった。田舎育ちの僕は普段から鍵をかけることの方が少なかった(こういう時のために鍵はかけていなければいけないのだと、僕は学んだ)。

ドアの向こうに誰かがいるのは明らかだった。猫や犬やイタチや狸といった動物が「こんばんは」と陽気に遊びに訪れたような音ではなかった。

その誰かは金属が触れ合うような音を立て、そしてドアノブに何かをあてようとしていた。何回かそういった動きをし、すこしためらうような間をおいてドアノブを回した。

その直前になんとなく予測がついたが、やはり隣の部屋の女の子だった。彼女はドアを開けた瞬間固まっていた。僕は僕で変に緊張してしまったせいか、子供がよくやるようにズボンの中に手を突っ込んでいた(そうするとなぜか安心するんだよね)。

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僕はすぐにその状況を把握できていたからあまりあわてなかったけれど、彼女はパニックにおちいっていたと思う。

そりゃ自分の部屋に入ろうとして、半そで短パンの男(しかもズボンに手を突っ込んでいる)がいたら誰でも驚くにきまっている。僕はそんな彼女の様子を眺めながら、そうなるのはもっともだよなと考えていた。

僕たちは2~3秒何も言葉を発しないまま、お互いを見あった。彼女の顔には緊張と驚きが浮かんでいた。そして何より疲れているように見えた。きっとくたくたになって帰ってきて、ぼんやりしたまま部屋を間違えたのだ。

僕は彼女に悲鳴でもあげられるんじゃないかと少しひやひやしたけれど、なんとか彼女は気づいてくれた。玄関の物の配置が全く違うのに気付いて、我に帰ったんだろう。

すいません、間違えました

と一言、小さい声で言って彼女はすぐにドアを閉めた。それからカチャリという隣の鍵が開く音がし、ドアが開かれる音がした。

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僕は何かを言うまもなく、少々あっけにとられてそのまま玄関に突っ立っていた。きっと彼女は驚いただろう。もしかしたら僕に対して申し訳なくさえ思っているかもしれないが、逆に僕の方がなんだか申し訳ない気持ちになった。

僕はため息をつきながらドアに鍵をかけ、部屋に戻った。隣はあいからず何の音もしなかった。

それから彼女は特にあらためて謝りにもきたりしなかった。もちろん僕も別にそんなことはしてほしくなかったからそれでよかった。

考えてみればあの時が彼女の隣人として住んだ2~3年の間の唯一の会話というか交流だったかもしれない。

ある日異臭騒ぎが起こる

ある時、僕のアパートの前で異臭がすると騒ぎになった。なんでも、警察まで来たらしい。結局すぐに異臭も消えて、特に異状もなかったため騒ぎは収まったそうだ。

僕はそのことを当時付き合っていた彼女から聞いた。何かの事情で彼女だけ僕の家に先に来ていて、僕があとから帰ってきたのだったと思う。そんな騒ぎは初めてだったので彼女は驚いたと言っていた。

「けっこう人がたくさん来て、物々しいかんじで騒いでたよ」

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僕が帰った時にはアパートのまわりの様子はいつもと全くかわらなかったのであまり想像できなかったけれど、きっと何かがたまたま匂って、近くの人が過剰に騒いだのかなと僕は思った。

それからふと、数日前から隣の女の子の部屋の前に段ボールがうずたかく積まれていることを思い出した。もしかしたらその事と関係あるのかな、と思った。その段ボールには一般の家庭でよくつかわれている洗剤の名前が書いてあったからだ。

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段ボールで10箱はあったからきっと30個くらいの洗剤があったはずだ。いったい何に使うのか分からなかったが、もしかして本当に新興宗教の信者で、危ない薬をつくっているんじゃないかと疑いもしていた。

そしてその日帰ってきた時は、その段ボールがきれいさっぱりなくなっていたことを考えると、きっとその洗剤と今日の異臭騒ぎは無関係ではないような気がした。というかあれが異臭の原因だとしか思えなかった。

あの女の子はちょっとしたへまをやってしまったのだろうか。

僕は彼女にその事を言い、二人でひとしきり話し合ったが、結局特に大したことではないだろう、という結論に至った。いや、そう自分に言い聞かせた。

誰かが僕を覗いている

そのあとすぐに、僕はドアの外で絵の作業を始めた。ちょうど学校でデッサンの授業があり、そのデッサンの余分なところを消しゴムで消したかったので、消し屑を掃除しなくていいように外に出たのだ。

提出が近かったので、僕は一生懸命に鉛筆の線を消していた。20分くらいたったころだろうか。

女の子の部屋のドアから鍵が開く音が聞こえた。

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あ、いま顔合わせるのなんかきまずいな、と僕は思ったけれど、今さら自分の部屋に引き返すのは間に合わない。仕方ないからここにいて挨拶しようと思い、ドアの方を眺めた。

しかしなかなかドアは開かなかった。

僕は不思議に思った。何か玄関でしているんだろうか? 僕は緊張しながらも視線はそらさなかった。

それからようやく取っ手が回って、ドアが少し開いた。さあ、いよいよ出てくるはずだ。

僕はこの前のことを思い出して、もしかしたらまた驚かれるかもしれないと、すでに申し訳ない気分になりつつあった。

しかし女の子はまだでてこなかった。

でもドアはほんの少しだけ開いている。ちょうど指二本分とかそれくらいの小さな隙間。部屋の中は暗くて何も見えない。

そしてその隙間の所でなにかが動いた。

僕は一瞬それが何かわからなかったが、よく見るとそれは人の顔だった。

小さな隙間から人の顔がこちらを覗いていた。

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最初、僕はびっくりするよりも何してるんだろう、と思った。次に、もしかして僕を不審者だと思って、女の子が様子を見てるのかなと思った。

というかそうとしか思えない。

いやいや、今の君のほうがあやしいから、と僕は少し呆れさえした。僕たちは以前のように少しの間見つめあった。

そしてあることに気付いた。

よくみるとこちらを覗いている人間は隣の女の子ではなかった。

ある程度年をとった女の人だった。その女の人はとても無表情にこちらを伺っていた。何を考えているのかよくわからない。ただじっと僕を観察していた。

僕はあの人間の表情をなんと表現していいかわからない。まったく初めて見る種類のものだった。それ以上見ていたらその暗がりに引きずり込まれそうな気がした。

僕はとつぜん心の底から怖くなった。人間に対してあれほど恐怖を感じたのは生まれて初めてかもしれない。

僕はすぐに目をそらして絵や消しゴムをその場に残したまま、すぐに自分の部屋に戻った。

部屋の中では僕の彼女が寝転んでテレビをみていた。僕がドアの鍵をかけ、チェーン錠もセットしたことに気付いた彼女は僕に「どうしたの?」と聞いた。いつもドアに鍵をかけない事をしっていたからだ。

僕はすぐに返事ができなかったが、少し冷静になり、さっきのことは今は彼女に伝えない方がいいだろうと思った。不必要に怖がらせたくない。

僕は「いや、、、」とだけ言って、ごまかすためにトイレに入った。

トイレの中で僕は深呼吸をして、さっきの人物がだれなのか考えた。普通に考えたらきっと隣の女の子の母親だろう。

でも母親というにはまだ若いような気もした。そして兄弟というにはまったく似ていなかった。

だとしたら知り合いか友人だろうか? でも知り合いが部屋にいたらもっと話声が聞こえてくるはずだ。このアパートの壁はとても薄い。

どちらにしてもなぜあんなに静かなんだ・・・?

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それから僕はその日の異臭騒ぎのことをあらためて思い出し、絶対に隣の部屋が関係あることを確信した。

だからといって警察に通報する気にはならなかったけれど、その日は特に不審なことには本当に警戒しようと思った。実際にこちらのほうに何か被害があったわけではないけれど、やはり気味が悪い。

僕はトイレから出て、夕飯の買い物をしてくるよ、と彼女に言った。いつも僕が自転車で買い物をすることになっていたからだ。

「戸締りしっかりしてね。僕が帰ってくるまで絶対に窓の鍵も開けちゃダメだよ」

「え、うん」と彼女は言った。

今思えば一緒に家を出るべきだったけれど、その時はいつもと変わった事をしない方がきっと怖がらせないですむと思ったのだ。

そもそもそんなことを言うこと自体が普通ではないという矛盾に僕は気づいていたが、平静を装う以外にどうしようもなかった。

僕は緊張しながら部屋の外に出た。隣のドアは閉まったままだった。中に誰かいるのかもわからない。反射的にさっきの暗がりから覗いていた顔を思い出してしまい、心臓の鼓動が速くなった。後ろから見られているような気がしたが、それは考え過ぎだということもわかっていた。

僕は自分がおびえていることに気付いた。

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それから僕はなるべくはやく帰ってこれるように全力で自転車をこいでスーパーに向かい、すぐに帰ってきた。

注意深く隣のドアを見てみたが、特に様子は変わらない。中に入ると彼女はテレビをつけたまま眠っていた。僕はそれでなんだか気が抜けて、緊張が解けた。

さっきのことは大したことじゃなかったんだと思って、先ほどよりも警戒を解いた。

まあ一応いつもより物音などに気をつけてみたけれど、結局その日はそれから特に何ごともなかった。

翌日も何もなかった。むしろ隣の部屋はいつもよりも静かになったように思えた。

そしてあの時感じた僕の恐怖は忙しい学生生活の中で薄まって次第に消えていき、やがて完全に忘れてしまった。

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忘れたころにやってきた訪問者

それからおそらく2,3か月くらいあとのことだけれど、ある時アパートのチャイムがなった。

僕はその時も本を読んでいたのだが、配達か何かだろうと思ってドアを開けてみると、知らない男が立っていた。

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年は20代後半〜30代前半だろうか。小綺麗なシャツの上に薄い茶色のジャンパーを着て、ジーパンを履いている。どうみても配達業者ではない。

僕のところにはよく宗教や新聞の勧誘が来ていたので、どうせまたそのどっちかだろうと思った。僕は少しうんざりしながら「なんですか?」とその男に言った。

「すいません、突然で申し訳ないんですがちょっといまこの辺りを訪ねて回ってまして、、、」
とその男は少々申し訳なさそうに言った。
「今、私の妹を探しているんですが、こういう人を知りませんか? 連絡が取れなくなりまして、、、この辺りに住んでいたみたいなんですが、、、」
男はそう言って僕に紙切れを見せた。

髪は手のひらサイズの大きさで、そこにはただ名前だけ書いてあった。

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僕はすぐに隣の女の子のことなんじゃないかと思った。最近、彼女の部屋は静かというよりも、人の気配そのものがなく、引っ越したのかと思っていたからだ。

僕は紙に書いてある名前をよく見てみたが、全く知らない名前だった。そもそも僕は彼女の名前さえ知らなかったことに気づいた。

僕は目の前にいる男に、隣に女の子が住んでいたんですがもしかしたらその子かもしれない、というか間違いなくその子だと思う、と言ってやろうかと思ったが寸前でとどまった。

僕のあの隙間から覗いてきた顔を見た瞬間から、彼女に関するすべてのことに最大限に警戒するようになっていた。

この男は本当に彼女の兄なんだろうか。
特に彼女のことを心配しているようにも見えない。
それに兄だとしたらなぜ写真の1枚くらい用意できないんだろう。
もしかしたら兄というのは嘘で、なんらかの理由で彼女を追っている他人なんじゃないだろうか。

僕は目の前の男が彼女の兄だと確信できなかった。

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「何か知っていることはありますか?」男は言った。
「いや、分からないですね」迷ってから僕は言った。

本能がこの男たちに関わるなと言っていた。あり得ないことだが、僕とその男のやり取りを、あの顔の人物がまた隣のドアの隙間から覗いているように感じた。
僕は早くこの男にここから立ち去ってもらいたかった。

「そうですか」と静かに男は言った。

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もしかしたらこの男は僕の微妙な心の揺らぎを感じ取ったのかもしれない。彼は僕を探るように見つめていた。自分が今何かを読み取られようとしているのが分かった。

「突然すみませんでした」
と少ししてから彼は言ったが、彼はまだ僕を隅々までスキャンするように見ていた。
僕は「はい」と言ってドアを閉めた。閉め切る瞬間まで男がそこに立っていたのが分かった。

僕はすぐにドアノブの鍵を閉め、チェーン錠もかけて、部屋に戻った。それから耳をすませて男の様子を探った。その時点で初めて自分がうまく息ができず、鼓動が早まっているのを自覚した。

男はほんの少しアパートの前にいたが、やがて立ち去った。
なぜ他の部屋は訪ねなかったんだろうと僕は疑問に思った。僕の部屋を訪ねる前でも後でも、彼が他の部屋のチャイムを押していたら聞こえるはずだった。しかし彼の訪問の前後にチャイムの音なんかまったく聞こえなかった。

どういうことなのか分からないが、彼はピンポイントで僕の部屋のチャイムを鳴らし、そして帰っていったのだ。

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僕は彼の気配が完全に消えてから、自分の彼女に電話した。
「おつかれー。今から会えない? 暇で」と僕は言った。
「どうしたの? 電話してくるなんて珍しいじゃん」と彼女は笑いながら言った。
「たまにはいいじゃん」と僕は言った。しかしうまく笑えなかった。
彼女はちょうど時間が空いたとのことだったので駅で待ち合わせることにした。
僕は少なからず救われた気持ちになって、部屋の外に出た。

隣の部屋のドアを見ると、そこはもう完全に空き室なんだという感じがした。生活の気配というものが全くない。気がつかなかったけれど、結構前からもう誰もいなくなっていたのかもしれないと僕は思った。

人はそれくらい静かに、壁を挟んで5メートルも離れていないところで暮らしている人間すら気づかないくらい静かに、消えさることができるものなのだと、僕は知った。

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最後に

身バレしない程度に細かなところは変えてあるけど、これは本当にあった話です。

怖くないですか?
僕は自分で書いててめっちゃ怖かった。もし読んだ方が何が怖いの??ってなったらそれは僕の伝え方が下手なんだと思います。
だって隣のドアがいきなりカチャッて少し開いて、その暗い隙間からじーっと見られたら怖くないすか?しかもよく見たら見覚えのないおばさんなんすよ?
普段はぜんぜん怖がらない方なんですけど、あの時は俺ほんとうにこわかったっすよ。
まさしくガクブルでした。

んで、つい最近までこのエピソードの怖いところはその隙間から覗かれるっていうところだと思ってたんすよ、僕は。

でもわりと最近この話を友達にしたら
「、、、もちろんそこも怖いけど、本当に怖いところはそこじゃなくね?」
って言われまして、どういうことか聞いてみたら
「いや、、、洗剤ってさ、よく人の死体を風呂で溶かすために、、、、しかも排水溝付近で異臭もしてるし、、、、
んで、突然いなくなったその女の子ってもう、、、、、」

それを聞いた時、僕は背筋が凍りましたよね。まじかよと。
でもそう考えるとそれまで不思議に思ってたことのだいたいの辻褄が合うんです。
というかもう、そうとしか考えられない。
んでさらにまた自分は本当にギリギリの所で恐ろしい体験をしたんじゃないかと思うわけです。

結局彼らは何者だったのか?

見たことのないあのおばさんと、訪ねてきた自称お兄さんがいったい誰だったのか、それは今でもわからないままです。

もしかしたらあのおばさんは、隣の女の子のお母さんだったかもしれないし、自称お兄さんは本当にお兄さんだったかもしれない。

特にお兄さんが本物だったとしたら、僕は彼に教えるべき情報を教えなかったことになります。もしそうだったとしたら本当に申し訳ないことをしたなと思います。
でもあの時僕は兄を名乗るその人物が何か一物もっているように見えた。不気味さという点では、あのおばさんと似たり寄ったりな感じがしました。
それはあの時に植え付けられた恐怖心が僕にそう見えさせただけなのかもしれないけれど、僕は本当にもうあんなのは嫌で、彼らに関わらないように必死でした。

恐怖というのは立ち向かうべき種類のものであると思うけど、それは正当な理由や守るべきものがあるからであって、まったく知らない誰かのために向かい合えるものではない気がします。本当の恐怖に対しては。
少なくとも僕にとってはそうです。恐いものからはなるべく逃げたい。とりあえず自分が安心だと思えないと、他人を助けることができない。

そんなことができるのは小説の中のヒーローにしかできないんじゃないかと。


もし、あなたが僕の立場だったらどうしましたか?

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